自分を責めない
友人が鬱病になった。
彼の口癖は「努力しなければ」というものだ。幼い頃から彼を知っている。経済的に恵まれない状況にあり、両親が離婚してからは、再会するまで、何十年かのブランクがあったが、真面目で明るい性格はそのままであった。本来なら高校に進学できたろうに、働きながら定時制に学び、進学を断念して、会計の簿記を独学して、23歳のときに、小さな会計事務所にアルバアイトで入った。そこでは、終に、正社員にはなれず、26歳で税理士の資格を取った。勿論ほとんど独学であった。新しい職を得て独立したが、当初は苦労の連続だったらしく、体重が70キロもあったのに半年で、55キロになっていた。それでも、顧客は少しづつ増えた。生活が安定したころに結婚、神戸に住み新しい生活が始まって何十年。そのときが一番幸せだったと聞いていた。しかし、震災にあい家は全壊し、顧客もほとんど無くなってしまった。もじどうり、いちからの出発であった。幸い家族は無事であり彼の仕事を手助けしていた。そんなときに彼はいつも努力を惜しまず勤勉であった。そして、最近以前より、大きくなった事務所に、出かけるのを苦痛に感じるようになっていた。そんなときに、たまたま、会食の機会があり、彼の元気のなさに心配した友人たちが、病院に行く事を勧めた。ボクなどは、付き添って彼を連れていった一人なのだが、やはり、「うつ」と診断された。彼には、努力が足りないと思うあまり、自分を責める傾向の強い人だった。全てを引き受けるタイプなのだ。彼は、最近顧客が減少したことで気に病んでいたと言う。しかし、これは、彼のせいではない。税理事務を依頼する会社が倒産していったことによる減少であるからだ。これは、経営という問題もあるが、突き詰めれば「政治」が悪いのである。昨今、自己責任と良く聞く。何か擂りかえられているような気がする。
政治が悪いのだ。
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